はたらけど はたらけど 猶わが生活 楽にならざり ぢつと手を見る
労働貧窮(ワーキング・プア)の天才歌人!
明治末期、貧しさの極みで、ひとりの男・若き父親として
自己の在り処を探し続けた薄幸の詩人・啄木――。
索漠たる「時代」に向けた、その悲痛な声を聞け!
自己の在り処を探し続けた薄幸の詩人・啄木――。
索漠たる「時代」に向けた、その悲痛な声を聞け!
・・・・・・それは文学への情熱を燃やしつくした幸福な生涯だったといえなくもない。しかし、生活面からみれば、貧窮と病苦と劣等感に苛まれた、この上なく不幸な生涯だった。そしてその生涯には、彼自身が「時代閉塞の現状」と名づけた明治四十年代の社会が濃い影を落としていた。その意味で、啄木の人生と文学は、われわれ現代人にとって決して無縁な世界でない。われわれもまた啄木の時代に劣らぬ閉塞の時代を生きているからである。――郷原 宏「解説」より
豊かな才能と強烈な自負心で明治の文学界に切り込んだ石川啄木。家庭的な問題から転居と転職、流離・漂白の生活を繰り返し、困窮の中での借金、子どもの死、家族や自らの病気に苦しんだ天才――。わずか26歳で夭逝した国民的歌人が残した不朽の名作『一握の砂』と、貧困と孤独から社会主義思想に接近する中で青年の生き方を激しく問うた『時代閉塞の現状』。平成の「格差社会」におくる真に革命的な一冊。
※この作品は、宝島社文庫オリジナルです。本文中、歌については「旧かな」とし、文章は読みやすさを考慮して「新かな」にしてあります。また、ルビを適宜、付け直してあります。本文中には、現在では不適切と思われる表現も見られますが、作品の時代性を考慮して、そのままにしてあります。(編集部)
目次
- 一握の砂
<献辞>
我を愛する歌
煙・・・ほか
時代閉塞の現状
(強権、純粋自然主義の最後及び明日の考察)
解説――漂白の詩人石川啄木、その詩と生涯 郷原 宏