さくらコンタクト route A 小河桃子
さくらコンタクト route A 小河桃子
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七月隆文×日日日「さくらコンタクト」特別対談 出し惜しみしないで一冊でヒロインの魅力を描ききる、という書き方ができたと思います。

──七月隆文さんと日日日さんによるシェアワールド企画「さくらコンタクト」。
発売を記念し、著者のお二人による特別対談をお送りします!

一冊完結の話って、なかなか書けないんですよ。

――それでは、まずは今回の企画が始まったきっかけについて教えてください。

七月 最初はギャルゲ作ろうと思ってたんですよ。日日日さんやりませんか? と誘ったら、軽快なフットワークで「いいよ」と。で、プロットは立てたんですが、スケジュールやその他の作業量的に難しそうだな…と。悩んだ末に、今回の形を思いつきました。結果オーライです!

――なるほど。ラノベになる過程で、内容が変わったりはしましたか?

七月 ほぼそのままですね。私の書いた「route A」の序盤は、まさにギャルゲの共通ルートという感じですから。

――舞台や、桜から力を得るという設定はどうやって決まったのでしょうか?

日日日 なんでしたっけ?

七月 ギャルゲらしい、汎用性の高い設定を……?

日日日 伝説の桜の樹の下で……

七月 そう! 大事なのは好き勝手やれる設定を用意することですからね。「桜のご神木の力によって何かが起こる」というベースなんです。僕のルートの桃子は、桜が咲いたことで未来予知に目覚める。日日日さんルートでは異世界の住民がやってくる。

日日日 春にした理由はなんでしたっけ?

七月  やっぱりギャルゲらしいじゃないですか、春って!

日日日 ああそうだった。この企画が始まってから、王道のギャルゲをやりましたよ。ToHeartとか。まだPCにありますね。

――執筆は、お二人で相談しながら進められたのでしょうか?

七月 プロットの段階でしっかり打ち合わせしました。そのあと、それぞれ書き下ろした感じですね。あと、こういうシェアワールドの形にできてよかったことがあります。

――というと?

七月 ラノベは基本、シリーズ化前提みたいなところがありますよね? だから、一冊完結の話ってなかなか書けないんですよ。一冊完結でしか書けないストーリーっていうのがけっこうあるんですけど。

日日日 ヒロインが死んだりね(笑)

七月 あるいは、一人のヒロインとあっさりくっつく、みたいな。それが書けたのがよかったですね。

日日日 ラノベだと、ハーレムにしないといけない、誰かのルートに進められないこともありますし。

七月 先が続けられるような展開にしないといけないですからね。僕ら以外にもいると思うんですよ、こういう一冊完結が書きたい人が。だから他の作家さんにも参加してほしいですね。

日日日 ラノベ作家は同じものを書いているから、たまに違うもの書きたくなるんですよ。

七月 そう。これ、やりたいことが二つ同時にできますよね。

――二つですか?

七月 「一冊完結のものが書きたい」「普段と違うものが書きたい」という二つの欲求。ギャルゲって、ヒロインのルートによってSFとか伝奇とか話のジャンルがぜんぜん違ってていいので、ほんとに自由です。もちろん普通の恋愛ものも。一巻完結の話が書きたい人に、この形を使って書いていただければ素敵なことだなと思いますね。

――なるほど。設定的に譲れない部分などはないんですか?

七月 全然ないですよ。春彦に不思議な能力が必要なら、桜の加護によるものだということにしてもらえれば。

日日日 「ぜんぶ桜のせいだ」みたいな。まずは僕と七月さんでどれくらい違いがあるかを見ていただけると。主人公の性格なんかも若干違いますよ。話の展開の影響もあるし、書いてる人間も違いますからね。

七月 でもギャルゲってそういうものですから。

――これを読んでいるラノベ作家の方々は是非、このラノ編集部まで!(笑)

本の中に書いてあるのは、だいたい僕の体験ですね。

――三嶋くろねさんのイラストはいかがですか?

七月 素晴らしいですね! カバーイラストを見たときは正直感動して、一日ずっと見てました。あと、描く速さがおかしい。

日日日 天才ってこういうことを言うんだなって。

七月 あの仕事量でTwitterにも落書きガンガン上げてるし。異能者だと思います。僕は異能者大好きです! あと、ありすはおっぱい大きくていいよね(笑)

日日日 締まるとこはキュッと締まっていてね。小物も可愛いし。

七月 三嶋さんは“手”のクオリティが違いますね、我々とは。

日日日 出力のかたちが違いますね、マヨネーズのキャップのように。

七月 羨ましいね。

――三嶋さんのイラストには乞うご期待!ですね。


――鎌倉が舞台のモデルとうかがいましたが、参考にされた部分などあるんですか?

日日日 ロケハンまでいったもんね。

七月 行きましたよ日日日さんと。鶴岡八幡宮とそこまでの参道「段葛」。そこは桜トンネルになってるんですよ。だから春に行くとすごく綺麗なんですね。

日日日 鶴岡八幡宮の裏手には学校があってね。ここがモデルなんだよね。

七月 そう。朝、段葛通って生徒が登校してたり。あと、参道の隣には「小町通り」なんてのもあって、いろんなお店が並んでるんですよ。

――桃子の家がある通りのモデルですね。

日日日 それっぽい喫茶店にも入りましたね。

七月 有名な喫茶店ですよ。ケーキが美味しかったですね。それから、取材として友人のカフェでバイトしたんですよ。春彦がバイトするシーンのために。だから、本の中に書いてあるのは、だいたい僕の体験ですね。

「さくらコンタクト」があってから、死なないものも書けるようになりました(日日日)

――日日日さんは、王道のギャルゲを書きましたと仰ってましたが。

日日日 頑張って勉強しましたね。ギャルゲの姉ルートだけ攻略して書きました。

七月 日日日さんといえば、「殺るときは殺る」という作風でおなじみですが(笑)

日日日 「さくらコンタクト」があってから、死なないものも書けるようになりました。

七月 おお、では日日日さんのターニングポイント的な作品になったんですね。プロットの打ち合わせでは、「日日日さん、これは王道のギャルゲじゃないですよ!」って言っていて……。

日日日 ガーン!って(笑)。脳の普段使ってない部分を使って書きましたね。

七月 いつもと違う日日日が読めるので、日日日ファンは必見ですね!

日日日 ラノベではいつもゴチャゴチャドタバタしたものを書いているから新鮮でしたね。

――七月さんもそういった意味では新鮮だったのではないですか?

七月 言われてみれば、そうですね…。ギャルゲとして回路を切り替えて書いていましたから、意識してなかったですね。

日日日 回路があらかじめ備わってたんですね。僕はFateのエミヤくんみたいに後からつけましたけど。

七月 新鮮と言えば、僕は『庶民サンプル』で、お嬢様学校での平穏な日常を書いているわけですけど、今回はガチなドラマを書きましたからね。ああ、七月こういうの書くんだ、日日日ってこういうのも書くんだ、というふうに思ってもらえれば。

日日日 王道のギャルゲって今の子わかるのかな……

七月 一人の女の子と心を通わせてのハッピーエンドですよ! 一冊で終わるから、気軽に読んで欲しいですね。

――まずは試し読みですね!(宣伝)

次の巻に回します、みたいなものがないですもんね。

――先ほど、シリーズものと一冊完結の違いについて話が出ましたが、この「さくらコンタクト」では具体的にどういった違いが出ましたか?

七月 一人のヒロインとずっと向き合っているから、そこの密度が非常に高いですよ。

日日日 僕のルートでも、ずっとありすと向き合ってますね。別のキャラのシーンを書くところを、ありすに使えましたから。何気ないデートのシーンとか、いつもは削りますからね。ぎんなんを食べるだけのシーンとかあるんですよ。

七月 いいねえ。読みたい。本当に、普段やれないことがやれました。プロットに入れられない部分というのは多いんですよ。そういう、いい意味で無駄なシーンが書けたと思いますね。

日日日 次の巻に回します、みたいなものがないですもんね。

七月 出し惜しみしないで一冊でヒロインの魅力を描ききる、という書き方ができたと思います。

日日日 一つのジャンルになるといいですね~。

七月 オープンソースですから。

日日日 春彦が触っても桜が咲かなかった、とかでもいいですよ。この春彦くんは桜の力に頼らないんだ! みたいな。コンタクトしてねーじゃねーか。

七月 咲かなかった、という結果が出たコンタクトですよ(笑)

日日日 俺ならこうする、ということを考えてみてほしいですね。

――では最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします。

日日日 持ち味を出しつつ、いつもと違うものが出来上がったと思います。

七月 普段のシリーズ第一巻では描き切れない「ヒロインの魅力」を存分に引き出せるように書きましたので、注目してみてください!

――お二人とも、ありがとうございました。(聞き手:このライトノベルがすごい!編集部)

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