孤立、貧困、無関心――。
車の中には、社会が積み残してきたものが溜まり込んでいた。
「年金だけでは家賃が払えない」、
「DVから逃れるため」、
「他人との関わりが煩わしい」……。
それぞれの理由、それぞれの事情を抱え、「車上で生活する人々」がこの日本社会には存在する。
小さな車に家財道具を積載し、夜が更けると狭い車内で眠りにつく。
社会から距離を置き、一種の“漂流生活”を送る車上生活者たち。
――彼らはなぜ、“車中の人”となったのか?
――その存在は、日本社会の「いかなる現実」を反映しているのか?
その実態に迫ったNHKスペシャル『車中の人々 駐車場の片隅で』(2020年2月放送)は大きな反響を呼んだ。
本書は、全国に1160ある「道の駅」すべてを初調査し、現場を駆けずり回って
取材を重ねたディレクター、記者、カメラマンたちが書き下ろした渾身のルポルタージュである。
目次
- はじめに
プロローグ“車中の人々"を追って
取材のきっかけとなった、“遺体遺棄事件"
▼第1章 住居をもてない人々
一人と一匹で暮らす“猫のおじさん"
“砂利の駐車場"にいた健一さん
塗装工の男性3人組
子どもを連れた“車上家族"
【コラム】「宿り木なき社会」社会学者・宮本みち子さん
▼第2章 逃げ場を求めて
助手席の夫を看取った女性
乳飲み子を抱えていた夫婦
制服を着た少女とその母親
虐待を受けていた男性
【コラム】「のたれ死にさせない」NPO法人・久留米越冬活動の会
▼第3章 それぞれの事情
「孫育て」に奮闘する女性親子
車上生活を繰り返す優しい青年
“二人三脚"車中のおしどり夫婦
▼第4章 世俗から離れて
10年間車で暮らした高齢男性
「遺体とともに」暮らしていた女性
海を見つめていた佐伯さん
エピローグ ロケが終わって、そして……