【ホラーサスペンス】
第1回『このミス』大賞、最大の話題作!
今すぐ逃げだせ!“生き神”にされるぞ!!
戦う武器はケータイのみ
第一回『このミステリーがすごい!』大賞第一次選考委員、
書評家 杉江松恋(すぎえ まつこい)さんのコメントより
本作の素晴らしい点は、作者が徹底して意地悪なところです。読者が安心していられる瞬間が、本当に一秒もない。
水野しよりは、年下の友人・火請愛子とともに、山間の温泉地「阿鹿里」を訪ねました。ところがそこは冷淡によそ者を排除する村でした。薄気味悪い思いを抱きながら投宿した二人でしたが、その宿で事件が待ち構えていたのです。
入浴後、温泉に愛子を残してしよりが一人で部屋に戻ると、なぜかそこに二人の持ち物ではない携帯電話が落ちており、しかも何者かがそこに電話をかけてきて いました。しよりは電話に出てしまいます。すると、男の声。今すぐにその宿から逃げ出さないと、彼女は片目、片腕、片脚を奪われ、村の生き神として座敷牢 に監禁されてしまう運命だという。
いや、いきなりそんなことを言われても。そうでしょう?なのに、愛子はなかなか部屋に戻って来ず、電話にさえ出 てくれない。謎の男「モノノベ」の話は聞けば聞くほどに不安が募る一方で、しかも宿の仲居たちがむりやり部屋に押し入ろうと、扉の向こうに群がってくるの です。さて、しよりは「モノノベ」の話を信じるべきなのでしょうか。それとも信じるべきではないのでしょうか。
結局彼女はある選択をします。そして第二部、今度は視点が愛子の側に移り、いくつかの謎が解決されるとともに、また新たな謎が提示されてきます。
そういった具合に、作者は二人の視点を交互に描き、結末へと読者を誘導していきます。
テニスプレイヤーのラリーで激しく打たれるテニスボールにでもなった気分。しかも次々と起こるトラブルのため、息つく暇さえありません。えーと、荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』第三部のような展開、といったらわかりますか? わからない?えへへ、困ったな。