2024年第22回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作『ファラオの密室』白川尚史2024年第22回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作『ファラオの密室』白川尚史

宝島社 2024年 第22回
『このミステリーがすごい!』大賞

ファラオの密室

白川尚史しらかわ なおふみ

自分が死んだ理由と、
密室状態のピラミッドから遺体が消えた謎を3日以内に解き明かせ!

冥界の審判を受けるため、欠けた心臓を探しに3日間だけ現世に蘇ったミイラのセティ。地上では王の遺体がピラミッドから忽然と消え、人々はアテン神以外の信仰を禁じた王の意志ではないかと疑うが……。不可能犯罪か神の御業か!?古代エジプトの信仰を背景に描かれる本格ミステリー!

発売日:2024(火)
全国書店にて発売

定価:1,650円(税込) ISBN:978-4-299-04931-5

ファラオの密室

先輩・友人からひと言

松本大(マネックスグループ代表執行役会長)

スーパーエンジニア、起業家、上場企業役員、そしてミステリー作家。本人自身がミステリーのような白川氏の想像力は、古代エジプトの現世と冥界を巡る……。超絶の構想と展開に、私の想像力が挑戦を受け、崩壊しかける。読む体験自体がミステリアスな衝撃の小説。

安野貴博(小説家『サーキット・スイッチャー』)

舞台は古代エジプトで、ミイラが主人公で、密室事件の現場がピラミッド内の玄室という大胆な設定に驚愕。見たことないタイムリミット・サスペンスに引き込まれました。古代のドラマの中に現代的なテーマが織り込まれており、爽快さもあるミステリーでした!

石川智健(小説家『ゾンビ3.0』)

誰もが書ける物語ではない。伏線が鮮やかで、その彩りによって時代や国を超えた息吹を感じ取ることができる。

『このミステリーがすごい!』
大賞とは!?

ブックガイド『このミステリーがすごい!』
から生まれた
ミステリー&エンターテインメントの
公募新人賞です。

今年の『このミス』は、連載30周年記念の
「名探偵コナン」の表紙が目印!

更新情報

2024年第22回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作『ファラオの密室』特設サイトを公開しました。

著者 白川尚史さんのXをチェック!

あらすじ

紀元前1300年代後半、古代エジプト・・・・・・死んでミイラにされた神官のセティは、心臓に欠けがあるため冥界の審判を受けることができなかった。欠けた心臓を取り戻すために地上に舞い戻ったが、期限は3日。ミイラのセティは、自分が死んだ事件の捜査を進めるなかで、やがてもうひとつの大きな謎に直面する。棺に納められた先王のミイラが、密室状態であるピラミッドの玄室から消失し、外の大神殿で発見されたというのだ。この出来事は、唯一神アテン以外の信仰を禁じた先王が葬儀を否定したことを物語るのか?先王の葬儀の失敗はエジプトの危機に繋がる。タイムリミットが刻々と迫るなか、セティはエジプトを救うため、ミイラ消失事件の真相に挑む!

読後感がたいへん
爽やかなのである

死者が甦る世界でなければ書けない魅惑的な謎に正面から挑んでいる。これだけ野心的な設定を用意して、壮大な物語をきちんと着地させた点を高く評価。このミステリーはたしかにすごい。

最終選考委員
大森望/翻訳家・書評家

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思いのほか
読みやすいし
分かりやすかった

現世に蘇ったミイラが何の違和感もなく受け入れられるあたり、落語にも似たとぼけた味わいがあり、思わず吹き出しそうになった。奇想天外な謎作りといい友情溢れる人間関係劇といい大賞の価値あり。

最終選考委員
香山二三郎/コラムニスト

最終選考選評をみる

いつの間にか
のめりこんでいました

探偵役がミイラ、タイムリミット有り、不可能犯罪のほか謎がちりばめられ、読ませるポイントが随所に用意されている。古代エジプトに興味をもてない方々もぜひ読んでください。

最終選考委員
瀧井朝世/ライター

最終選考選評をみる

著者ごあいさつ

白川尚史しらかわ なおふみ

プロフィール

1989年、神奈川県横浜市生まれ。東京都渋谷区在住。弁理士。東京大学工学部卒業。在学中は松尾研究室に所属し、機械学習を学ぶ。2012年に株式会社AppReSearch(現 株式会社PKSHA Technology)を設立し、代表取締役に就任。2020年に退任し、現マネックスグループ取締役兼執行役。

コメント

光り輝く黄金の仮面、巨大なピラミッド、死者の書を携えて埋葬されたミイラたち……古代エジプトには、死後の世界への憧れとロマンが満ち溢れています。こうしたイメージが先行する一方で、盗掘や聖刻文字(ヒエログリフ)の難解さにより、未だ多くのことが謎に包まれています。当時の人々が何を考え、どのように暮らしていたか。限られた史料から、今も究明の試みが続いています。調べるうち、私もこの未知と謎にすっかり魅了され、空想の翼が羽ばたく舞台にふさわしいと確信しました。どうかご一読頂き、その魅力を共有できれば嬉しいです。

『このミステリーがすごい!』
大賞編集部より

舞台は古代エジプト。探偵はミイラ。エジプトの信仰を背景に繰り広げられる事件……。いくら選考委員が絶賛していても、昔すぎるし遠すぎる……と思った方、ご安心ください。友人や家族への思い、猜疑心や悩み――。人の思いは、紀元前でもエジプト人(なんならミイラ)でも、同じです。街の人たちがミイラを受け入れていく様は落語「粗忽長屋」のようにユーモラスで、ミイラが奔走する姿は『走れメロス』のような切迫感を覚えます。アテン神信仰以外を否定した時代の転換期の物語ですが、価値観の多様性を受け入れる現代への提言にも感じました。密室状態のピラミッドから王様のミイラが消えたという超王道の本格ミステリーの真相とともに、懸命に生きる人々の姿を、ぜひご堪能ください。

\応援メッセージ続々到着/ミイラ探偵がピラミッドの
密室の謎を解く!?

古代エジプトが舞台ということで難しいのかな?と思ったらミイラが甦る?まずこの設定からビックリ。
というかエジプトの人々が何も抵抗なく受け入れていたので「ああ、こういうものなのか」と意外とすんなり私も受け入れることができました。これがすごい!
謎解きと友情、そしてタイムリミット、すべて最高。古代エジプトのことを詳しく知らない私もしっかり楽しめました。

宮脇書店ゆめモール下関店/吉井めぐみ

名探偵はまさかの死者!?そしてミイラ!?
自分を殺した犯人探しと、なくした心臓の欠片を取り戻すために、現世に蘇り謎を解くという、仰天のストーリーに絶句!
恐る恐るページをめくり、読み始めてビックリ!
タイムリミットが迫りくるような、スピーディな展開に、息つく間もなく一気読み!
まるで私も、古代エジプトで、謎解きに奔走しているようでした。
バラバラになっていた事件のピースが集まり、解き明かされた真実に、全身に衝撃が走るようでした!
今までにない斬新な古代ミステリ!最高でした!

紀伊國屋書店福岡本店/宗岡敦子

ミイラが現世に戻ってタイムリミットまでに突きとめなければならないもの、何が判明するのかというこの設定にまず引き込まれないわけがない。
古代エジプトの人々の怒り、悲しみ、苦しみがその背景とともに焼き付いて離れない。
その時代のことでありながら、人間の業と信頼を思い、現代にも通じるものを感じ、心震える。そして根底から覆されたミステリの仕掛けに呆然とした。さらに最後に不意をついて痺れる真実を知り、絶句し、なるほどとすごく腑に落ちた。

ジュンク堂書店滋賀草津店/山中真理

リミット3 日。自分を殺したのは誰? 密室の謎は?
木や石で出来たミイラの姿で蘇り謎を解いていく。
死者が復活したり神々が起こす超常現象は「当たり前」 の世界で、殺人やトリックの謎は「論理的」 に解き明かす。
そのギャップが新鮮で面白かった。
古代エジプト史に繋がる事件の解決と、最後の“嘘”の言葉に秘められた真実に感動しました。

フタバ図書広報課/水本伸一

いや凄かった!まるで古代エジプトにいるような臨場感で、3日間のタイムリミットが迫り来る。
蘇った主人公のミイラがまさかの生き生きとした疾走感で、密室ピラミッドの謎を解き、自らの死の真相を探る姿から、人間愛と浪漫に胸躍るのだ。 壮大なスケールで描かれた歴史の神秘に包まれる唯一無二のミステリー!

うさぎや矢板店/山田恵理子

ミイラとなった死者が蘇って、自分の心臓の欠けた一部を取り戻しに現世へ戻って来る。そんなあらすじを読んで、どうやって成立するのだろうかと思ったのも束の間。
気付けば彼らと一緒にエジプトの町を駆け回っていた。

この国の人たちの信仰心や生きている土台を踏まえて物語は進み、 途中疑問に思うことはカリが代弁してくれた。 だからこの世界観に自然と入り込めたのだと思う。
欠けた記憶と心臓を取り戻そうと奔走するセティを歓迎する者もいれば疎ましく思う者もいる。 味方だと思っていたら実は敵で、敵かと疑っていたら味方で。

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“何故”の答えをひとつずつ解いていく度に、壮大な歯車のひとつに自分が組み込まれていたことに気付く。
みんながそれぞれの信じるものに忠実だからこそ、 悲しみや憎しみが生まれる。
信じること疑うこと、受け入れること拒否すること。 様々が行き交わって、最後の最後までハラハラしっぱなしだった。
そしてようやくたどり着いた最後の審判で明かされるセティの真実に、どうかしあわせであるようにと祈らずにはいられなかった。
死んだら終わりだというけれど、死んだ後、こうして誰かを守るために力を尽くすことができるということは、 案外羨ましいことなのかもしれない。
命があるうちには言えなかったこと、できなかったことを、思い残すことなくやり遂げ告げることができたことで、残された人たちが救われたのだと思う。
一風変わったミステリーだったけれど、魅力的だった。

水嶋書房くずは駅店/永嶋裕子

古代エジプト王国、ピラミッド、ミイラ、黄金、誰もが興味を持つ。しかし実際に日常で勉強する人はなかなかいないでしょう。
そんな人達にミステリーとして楽しめるだけでない古代エジプトを知る扉を開けてくれるような作品です。三日という時間の制限がよりハラハラさせ、迷路に迷い込んだような、誰がセティの敵なのか、味方なのか最後まで真実が想像できない、そして終わりには思いも寄らない、既存のミステリーにない結末が待っていました。

ジュンク堂書店三宮店/三瓶ひとみ

「ファラオ」というのが何かの比喩なのか、と思いながら読み始めたのだが、なんとなんと、正真正銘マジもんのファラオの密室でしたよ!
いやはやびっくり!舞台がエジプトで探偵がミイラ、って、もうね、これ以上の特殊設定ありませんよ。
極みです極み!でもって、その極みの謎解きが本格ミステリと来た日にゃ、五体投地するしかないね全く。
最後の最後まで読ませるところも、さすがこのミスって感じでよき。あぁ、面白かった。

精文館書店中島新町店/久田かおり

これまで様々な『このミス』作品を読ませていただきましたが、「ファラオ!舞台はエジプト?」「ミイラが探偵?」等、色んな疑問が湧き、読む前から面喰らってしまいました。
けれど、読めばとっても読みやすく、「ミイラが探偵」という個性的な設定は意表を突くだけではなく、この設定でなければ実現し得ないミステリになっている。
そして、初見ではハードルが高く感じる舞台設定だが、エジプト文明の事前知識がなくても、とてもわかりやすく、読み終えた時にエジプト文明への興味・関心が高まり、新たな学びにつながりました。

文教堂本部/青柳将人

なんと強烈なインパクトを放つ歴史ロマンなのだろう。
ミイラとなるも現世に舞い戻った男。さらに先王の遺体も消失。
欠落が物語の鍵となるも、まったく隙のない展開に目を見張る。
タイムリミットを抱えた緊迫感が尋常ではなく、国家を揺るがす大事件に押し寄せる高揚感も半端ない。
悠久の大地に妖しく輝く冥界からの光もまた眩しい。
ただ面白いだけではない。再現された古代エジプトの死生観も鮮やか。
これぞエンタメの極致。まさに神業といえる一冊だ!

ブックジャーナリスト/内田剛

古代エジプトの世界で、ミイラが蘇ったり、太陽が大きくなったりするのをすぐ受け入れられる本(物語)ってこれだから好き。 王の遺体が消えたトリックには思わずえーーー!そして活用がすごい。最後はちょっと切なくて、違う驚きが待っていました。

三省堂書店名古屋本店/田中佳歩

ミイラが探偵とはどうゆうこと!?と思い読み始めましたが、なんと神秘的なミステリーなのでしょう!
「王家の紋章」世代の私には物語の舞台が「古代エジプト」というのにとてもワクワクしました。
ですがミイラが生き返るのだけでもびっくりなのに、それを喜び受け入れるエジプト人たちに驚きです。
さらにこの密室トリックは衝撃で、この謎を解ける読者は、はたしているのでしょうか!?
宗教観死生観の違いはあるものの登場人物の家族や友人を思いやる気持ちには共感することもあり、胸が痛くなりつつもエジプト人の信じる冥界で幸せになって欲しいと思いました。
面白かったです。ありがとうございました。

BOOKSえみたすピアゴ植田店/清野里美

舞台は古代エジプト、ピラミッドかぁ。
遠いなぁと思いながら読み始めましたが…めっちゃ面白い!!!!!!

ページをめくる手を止めることはありませんでした!
自分の死の真相を突き止める蘇り探偵セティ。
その死には、信仰に関わる壮大な計画が背景に…
ところどころにちりばめられたエジプトの神やその信仰に関わる知識も楽しく、エジプトという国の異文化に触れることもできました。
海外旅行も楽しめる状況に戻った今、この本を読んでエジプトに興味を持つのもよし、すでにエジプト旅行を計画している人は機中のお供にピッタリだと思いました!

山下書店世田谷店/漆原香織

舞台設定と探偵役のユニークさもさることながら、盛り込まれたミステリーの興趣と現代にも通じる人間ドラマの見事な融合に舌を巻いた。
神と人、王と民衆、親と子、生者と死者、そして友と友を超えた……。
こうした様々な関係性を通じて終盤に立ち上がる、相手を想う強い気持ちが何かを動かす大きな力となる希望の光。
そのきらめきが、読み終えてなお胸の奥で熱を帯びて冷めない。
エモーショナルなミステリーを手際よく仕立てる新たな書き手の誕生を心より寿ぎ、これからの大きな活躍が愉しみでなりません。

ときわ書房本店/宇田川拓也

自らの死因を探る為に蘇ったセティ。
まさかのミイラが探偵!
しかもファラオの遺体がピラミッドから消失した謎も解かなければいけないなんて!
斬新な設定に驚きました!
幼馴染のタレクとセティの固い絆、疎遠となっていた父親との邂逅、奴隷の少女カリと共に挑む不可能犯罪の謎。
セティははたして解決できるのか!?
面白すぎて一気読みです!
そして、まさかの真実に涙が止まりませんでした…。
魅力的な歴史ミステリー!
こんな物語を待っていました!

丸善名古屋本店/竹腰香里

著者に訊く

マネックスグループの取締役兼執行役の白川さん。投資家というと『四季報』のイメージがありますが、ミステリージャンルで好きな作家・作品は?
投資家にも色々ありまして、私は創業したての会社、いわゆるスタートアップに投資することが多いです。未上場の企業の情報は四季報にはありませんから、創業者のひととなりや、彼らの紡ぐストーリーを見て投資の判断を行うことになります。
私が思うに、人を見る目を磨くのに物語ほど適切なものはありません。企業の経営指南書よりも、一冊の小説のほうが、人について多くのことを教えてくれると思います。
と、言い訳のような前置きをしつつ、実際には趣味全開で、綾辻行人先生、三津田信三先生、横溝正史先生……と日本を舞台に伝奇の色を帯びた本格・新本格を好んで読んでいました。『霧越邸殺人事件』のような館ものも大好きですし、『首無の如き祟るもの』『凶鳥の如き忌むもの』のようなホラーを基調に骨太な推理で読者を圧倒する作品にも感銘を受けました。『悪魔の手毬唄』のいわゆるマザーグース殺人は、長編小説の醍醐味といえます。
一方で、経営者としては、孤独な心にハードボイルドが沁みました。特に印象に残っているのはローレンス・ブロック『八百万の死にざま』です。田口俊樹さんの名訳も相まって、最後まで読み終えたときのカタルシスは生涯忘れえないものとなりました。
大学時代は「AI」とか「ディープラーニング」の研究をされていたとのこと。具体的にはどのようなことを? ITが苦手な人にもわかるように教えてください。
AIの基礎的な考えは、パターン認識にあります。膨大なデータから特定のパターンを見つけ出すことを機械で実現するのが、そもそもの人工知能の起こりでした。
例えば、生まれたばかりの赤ちゃんは、個々のチンパンジーの顔を識別できるという話があります。しかし、成長につれて見分ける力は衰えていき、我々大人含め、チンパンジーの顔であることはわかっても個別の顔を見分けられなくなります。脳の発達により、普段識別する必要のない情報をパターンに落とし込んでしまったために起こる現象です。一方で我々は、パターン認識をするからこそ、膨大な情報を高速に処理できているともいえます。
機械によるパターン認識が役立つ一例を挙げますと、道に迷っている人、しゃがみこんでいる人や車いすに乗っている人など「困っている」可能性のある人を防犯カメラが認識し、警備員に通知する「新たなおもてなしサービス」があります。私の創業した会社が三菱地所様、綜合警備保障株式会社様と協力し、千代田区の新丸の内ビルディングで実証実験を行ったこともありました。
この技術の応用で、例えば介護施設で夜間に危険がないかを見守ることも考えられます。AIにより、誰かが夜を徹してカメラに張り付く必要がなくなり、疲労や集中力の欠如を避けられます。これからも技術は社会実装され、人の生活をよりよくしてくれると考えています。
今後は、投資家・経営者・作家の「三足のワラジ」になるかと思いますが、各「足」の目標や野望をお聞きしたいです。
投資家としては、引き続きエンジェル投資家として多くの技術系スタートアップと関わっていくことが目標です。世界を変えねばという使命感に燃える人々は、見ていて気持ちのいいものです。彼らを応援すると同時に、私も頑張ろうという気持ちをもらえます。
一方で実はこの活動が、作家業にもいい影響を与えると考えています。我々は無意識に相手を性別や年代、職業などでパターン化してしまいがちですが、得てしてユニークなことが多い創業者の方々は、「同じ人は二人いない」という当たり前のことを思い出させてくれます。人をありのままに観察し、自分とは全く異なるその心うちを推察することが、ときには相反する多様な価値観を自分の中に同居させ、ひいては魅力的なキャラクターづくりにつながるのではないかと考えています。
そして、作家業は書き続けることそれ自体が目標です。強いて言うなら、“令和のハードボイルド”を面白く書くことが野望ですが、私は自分が主張したいことや書きたいものを書くよりは、「読者が読みたいと無意識に欲しているもの」を仮説立てし検証する方が性に合っていると思うので、これからも様々な実験的な試みをしていきたいです。
経営者としては、自らそうあるというよりも、株主の皆さんから選んで頂いてなるものです。選ばれた以上は職務を全うしたいと思いますし、企業価値に貢献していくことが私なりの社会活動であろうと考えております。
受賞作は大変にユニークな作品ですが、本作を書かれたきっかけは?
そもそもの出発点は、読者が読みたいのにまだ見たことがないものはなんだろう、という問いでした。そこで、今まで自分が無意識に現代〜近未来に置いていた舞台設定を、過去まで広げて考えてみました。最初に目をつけたのが古代中国です。私は幼少期に『封神演義(安能務訳)』をカバーが擦り切れるほど読んでいたので、古代中国は大好物なのですが、直近の受賞作として、第67回江戸川乱歩賞を桃野雑派先生の『老虎残夢』が受賞しており、ひとまず類似する舞台は避けるほうが無難かなと思いました。
そこで世界地図とにらめっこして、目をつけたのが古代オリエントでした。特にメソポタミアやヒッタイトに興味を持ち、史料を調べ始めました。
古代の文明は、戦争と切っても切れない関係にあります。オリエントのことを調べるにつれ、すぐ近場にあるエジプトという文明が、黄金のマスクやツタンカーメンという言葉から来るイメージと全く異なる顔を持っていることが明らかになりました。更には、今なお研究の途上にあり、まだまだ未知に溢れているということを知りました。エジプトの要素を絡めたミステリはあれど、古代エジプトそのものを舞台にした物語はそう多くなく、書いてみる価値はあるのではないかと思い、筆を執りました。楽しんで頂けますと幸いです。

\『このミス』大賞受賞作の主人公たち/警視庁の刑事から
駆けまわるミイラまで

失意の元ピアニスト

第1回

四日間の奇蹟

浅倉卓弥(あさくら たくや)

四日間の奇蹟

収容施設〈キャンプ〉の因人

第1回

逃亡作法 TURD ON THE RUN

東山彰良(ひがしやま あきら)

逃亡作法

元相場師&アングラカジノ店長&キャバクラ店長

第2回

パーフェクト・プラン

柳原慧(やなぎはら けい)

パーフェクト・プラン

元刑事の警備員

第3回

果てしなき渇き

深町秋生(ふかまち あきお)

果てしなき渇き

人気球団の投手

第3回

サウスポー・キラー

水原秀策(みずはら しゅうさく)

サウスポー・キラー

厚労省の変人役人

第4回

チーム・バチスタの栄光

海堂尊(かいどう たける)

チーム・バチスタの栄光

セキュリティ会社社員

第5回

ブレイクスルー・トライアル

伊園旬(いぞの じゅん)

ブレイクスルー・トライアル

ビストロレストランのシェフ

第6回

禁断のパンダ

拓未司(たくみ つかさ)

禁断のパンダ

高校生

第7回

屋上ミサイル

山下貴光(やました たかみつ)

屋上ミサイル

臨床心理士

第7回

臨床真理

柚月裕子(ゆづき ゆうこ)

臨床真理

異世界日本の少年

第8回

トギオ

太朗想史郎(たろう そうしろう)

トギオ

天才ピアニスト

第8回

さよならドビュッシー

中山七里(なかやま しちり)

さよならドビュッシー

少女漫画家

第9回

完全なる首長竜の日

乾緑郎(いぬい ろくろう)

完全なる首長竜の日

酔いどれ弁護士

第10回

弁護士探偵物語 天使の分け前

法坂一広(ほうさか いっこう)

弁護士探偵物語・天使の分け前

陸上自衛官

第11回

生存者ゼロ

安生正(あんじょう ただし)

生存者ゼロ

知能犯担当の刑事

第12回

警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官

梶永正史(かじなが まさし)

警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官

革命家

第12回

一千兆円の身代金

八木圭一(やぎ けいいち)

一千兆円の身代金

小学生

第13回

女王はかえらない

降田天(ふるた てん)

女王はかえらない

ギャラリーのアシスタント

第14回

神の値段

一色さゆり(いっしき さゆり)

神の値段

株トレーダー&元銀行員

第14回

天才株トレーダー・二礼茜 ブラック・ヴィーナス

城山真一(しろやま しんいち)

天才株トレーダー・二礼茜 ブラック・ヴィーナス

呼吸器内科医

第15回

がん消滅の罠 完全寛解の謎

岩木一麻(いわき かずま)

がん消滅の罠 完全寛解の謎

オーパーツ鑑定士

第16回

オーパーツ 死を招く至宝

蒼井碧(あおい ぺき)

オーパーツ 死を招く至宝

サイコパス弁護士

第17回

怪物の木こり

倉井眉介(くらい まゆすけ)

怪物の木こり

紙鑑定士&プラモデル造形家

第18回

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人

歌田年(うただ とし)

紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人

企業弁護士

第19回

元彼の遺言状

新川帆立(しんかわ ほたて)

元彼の遺言状

凄腕弁理士

第20回

特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来

南原詠(なんばら えい)

特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来

レビー小体型認知症の老人

第21回

名探偵のままでいて

小西マサテル(こにし まさてる)

名探偵のままでいて

神官のミイラ

第22回

ファラオの密室

白川尚史(しらかわ なおふみ)

ファラオの密室

ファラオの秘密

ファラオの密室

白川尚史しらかわ なおふみ

発売日:2024年1月9日(火)
定価:1,650円(税込)
ISBN:978-4-299-04931-5

これまでの大賞受賞作

名探偵のままでいて

第21回大賞受賞作

名探偵のままでいて

小西マサテルこにし まさてる

特設サイトはこちら

発売日:2023年1月7日
定価:1,540円(税込)
ISBN:978-4-299-03763-3

特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来

第20回大賞受賞作

特許やぶりの女王
弁理士・大鳳未来
(宝島社文庫)

南原詠なんばら えい

特設サイトはこちら

発売日:2023年2月7日
定価:780円(税込)
ISBN:978-4-299-03916-3

元彼の遺言状

第19回大賞受賞作

元彼の遺言状
(宝島社文庫)

新川帆立しんかわ ほたて

特設サイトはこちら

発売日:2021年10月6日
定価:750円(税込)
ISBN:978-4-299-02122-9