小説家と脳科学者が涙について考えた
「涙を流すとき、脳では何が起こっているんだろう」
小説家と脳科学者の涙の理由を探す旅が始まる。
「泣ける」本や、「泣ける」唄が大ヒットする“涙”ブームの現代。わたしたちは涙の意味やメカニズムについて、どれだけのことを知っているでしょうか。本書では、人はなぜ涙を流すのか…その理由と意味を、直木賞受賞のベストセラー作家・重松清氏と小林秀雄賞受賞の脳科学者・茂木健一郎氏が「心」と「脳」というキーワードで探っていきます。「人はなぜ悲しいと思うのか」「“涙” の持つ社会性とは」「芸術と涙」などのトピックを、小説家・学者の目線で語り合う、知的な刺激・ヒントに満ちた1冊です。
- 改訂し、文庫化して、2014年06月05日に宝島SUGOI文庫『涙の理由』を発売しました。
目次
- はじめに
第 1 章 TVで見た悲しい事件に怒りを覚える理由
二〇〇六年三月、カナルカフェにて
重松清作品とやるせなさ
小説は「社会に対するお土産」
重松清とシゲマツキヨシ
脳の欠点・短所から長所が生まれる
やるせなさは解決しちゃうと嘘だと思う
・・・ほか
第 2 章 「涙」は「さんずいに戻る」と書く
二〇〇六年四月、品川御殿山庭園にて
人はなぜ悲しいと涙を流すのだろう
もし、涙が指先から滴るものだったら
泣くことで大事なものを掴まえる
涙は「生命原理そのもの」とつながっている
重松清というモンスター
・・・ほか
第 3 章 有限の生しか持ちえない私達ができること
二〇〇六年五月、東京藝術大学にて
対論「涙の理由」
文学の中にある「涙の理由」の本質
『その日のまえに』の赤い歯ブラシ
感動とは何か? 藝大生と考える
「9・11テロ」は最高のアート表現か?
・・・ほか
第 4 章 それぞれの時代の涙
二〇〇七年四月、新宿京王プラザホテルにて
涙は感染するのだろうか
「歌舞伎の涙」と「男の涙」
時代小説の涙は現代の涙か?
インターネットと人工心臓
共同体と「涙の談合」
・・・ほか
第 5 章 いつか「自分だけの涙」を流すために
二〇〇八年三月、ANAインターコンチネンタル東京にて
イチローの涙と清原の涙
涙の所有権
涙と生の一回性について
豊かな記憶が「自分だけの涙」をつくる
『わたしを離さないで』と生の希薄感
やりきれなさを無毒化するテクノロジー
涙のトレーニングをしているか?
・・・ほか