『ここまで描写が執拗かつ
繊細な小説だったか!』
芥川賞作家
羽田圭介
(羽田圭介氏による鑑賞文収録)
背徳の中に至上の美を見出した
谷崎文学の頂点
質素で平凡で、時には「君子」とも呼ばれる生真面目な電気技師・河合譲治は、浅草のカフェーでナオミという美少女と運命的な出会いを果たす。ナオミの妖しげな美貌に魅せられた譲治は、彼女を自分好みの妻に育て上げようと共同生活を始めるが――。悪魔的な愛欲の奴隷へと堕ちながらも、それを悦びと感じてしまう男の数年間を描いた谷崎文学の最高傑作。巻末に芥川賞作家・羽田圭介氏による鑑賞文を収録。
※文中には、現在の観点からみると差別的表現ととられかねない箇所が散見しますが、作品ならびに著者自身には差別を助長しようという意識はなく、本作の歴史的価値や芸術性、また著者がすでに故人であるという事情をふまえ、原文どおりとしました。