この病気は、
もう治らない。
43歳、
ステージ4、
脳への多発転移――
1000人のがん患者を
看取った医師が
がんになって
初めて見えた風景
それでも、僕は
仕事を続ける。
プロの読影医ではない私が見てもすぐにわかるくらい、
影は胸膜に達し、一部気胸をおこしており、肺門リンパ節が腫脹していた。
もう一度、モニターに表示されている日時と、被験者名を見直した。
だが、そこには間違いなく
「関本剛」という名が表示されている。
血の気が引いていくとはまさにこのことだった。
わずか40年余の人生において、何かを成し遂げたわけでもない私にできることがあるとすれば、医師と患者の両方の立場からがんという病気と向き合った記録を残すことしかない。それが1人でも多くの「がんを生きる」患者さんにとって、有益かつ実用性のある内容となること――
それが著者としての唯一にして最大の願いである。