「尾張の大タワケ」がマムシ・斎藤道三や貴人・今川義元を相手に、 知力・体力のすべてをかけて生き抜く戦国の世! |
桶狭間にいたる若き英雄の日々。 戦国の無頼と昭和の無頼、作家と素材の 妬ましいほど幸福な出会い! 作家・浅倉卓弥 |
安吾の『信長』を読め。それのみが勝つ道だ。 徹底したプラグマティストで、左右両派の硬直した精神主義を排し、生活こそ真、生きることこそ善、必要のあるところにこそ美がある… 安吾のこうした生き方と美学は、そのまま信長のものだといっていい。 乱世を阿修羅のごとく生き急ぎ、四十八歳という若さで志半ばに急逝したところまで、この二人は双子のようによく似ている…戦中にすでに日本の敗戦を見通していた安吾は、戦後七年たってもついに新しい「信長」が現れないことを嘆いて、この孤高の武将の物語を書いたのである。 それから半世紀。花移り人は変じて戦後はすでに雲煙の彼方に遠のいたが、安吾が描いた「信長の精神」は、今もなお鮮烈な輝きを失っていない。 ───文芸評論家・郷原 宏(「解説」より) |