宝島社 2026年第24回『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作 最後の皇帝と謎解きを 犬丸幸平

宝島社 2026年 第24回

『このミステリーがすごい!』大賞
大賞受賞作

最後の皇帝と謎解きを

最後の皇帝と謎解きを

犬丸幸平いぬまる こうへい

紫禁城で起こる事件に
清朝最後の皇帝と
日本人絵師が挑む!
身分も国も超えた人々の
友情×歴史ミステリー

舞台は1920年の中国。北京在住で日本人絵師の一条剛は、紫禁城に住む溥儀(ふぎ)に水墨画の師として雇われた。しかし実際には、城に眠る水墨画を贋作にすり替えて真作を秘密裏に売却し、清朝復興のための資金を調達する目的があった――。
側近の一人が密室で不審死を遂げた事件を皮切りに、龍の絵に何者かの手で描き加えられていた眼、あるときを境に感情を失くした宦官など、一条はさまざまな謎を溥儀と解き明かすことになる。立場を超え、二人の間に友情が芽生えていくが......。

発売日:2026年1月9日(金)
全国書店にて発売

定価:1,760円(税込)ISBN:978-4-299-07500-0

『このミステリーがすごい!』
大賞とは

ブックガイド『このミステリーがすごい!』から生まれた
ミステリー&エンターテインメントの
公募新人賞です。

『このミステリーがすごい!2026年版』の表紙は
ゲーム『都市伝説解体センター』です

更新情報

2026年第24回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作『最後の皇帝と謎解きを』特設サイトを公開しました。

最終選考委員コメント

少年廃帝と若き日本人絵師との交流を軸にした日常描写は魅力たっぷり。この時代のこの場所をピンポイントで選んだ着眼はすばらしく、たいへんユニークな歴史ミステリーに仕上がっている。

大森望/翻訳家・書評家

最終選考選評をみる

過酷な運命を強いられた少年皇帝と異郷で孤立しがちな若き日本人画家の絆が育まれていくありさまが素晴らしい。

香山二三郎/コラムニスト

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当時の紫禁城を知らない読者とほぼ同じ目線の主人公のため、物語世界に入りやすい。連作形式で謎もバリエーションに富んでおり、かつ、この舞台ならではの謎となっている。

瀧井朝世/ライター

最終選考選評をみる

※香山二三郎さんが69歳で逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

著者ごあいさつ

締切2ヵ月前、浅田次郎先生の『蒼穹の昴』を読み、胸が熱くなった。私も清朝を舞台にした小説に挑戦したいと思いましたが、何も知識がない状況。
いつもの自分なら時間や実力を言い訳にして諦めていたかもしれません。しかし春児(チュンル、『蒼穹の昴』の主人公)が、何度も助けてくれた。彼が自分の未来をその手で切り開いたように、私も小説家になるという不確かな夢を自分の手で切り開きたかった。小説には人の心を動かす力があると信じています。

著者は40ヵ国を訪れたバックパッカー

プロフィール

犬丸幸平いぬまる こうへい

1994年、大阪府箕面市出身。神奈川県川崎市在住。京都産業大学英米語学科卒業。
在学中からバックパッカーに夢中になり、中東、南米、アフリカなどを中心に約40ヵ国を訪問。ハイパーインフレーションの起こったベネズエラで、大量の紙幣を抱えながら旅を続け、同国ロライマ山でテント泊をしたり、エンジェルフォールに行ったことが思い出。
現在は、パキスタンで絨毯の買い付けなどをしている。趣味は筋トレ。推理小説を読むきっかけになった漫画『名探偵コナン』の連載開始年に生まれ、誕生日は5月7日(コナン)。

犬丸幸平のクレイジーな旅

1南米編 「地球最後の秘境」ギアナ高地

ベネズエラ「ロライマ山」 Photo: Alexandree/Shutterstock.com

2015年5月26日。僕はベネズエラに入国するため、アマゾンを越えブラジルを北上していた。「地球最後の秘境」と呼ばれる地が、ベネズエラにある。その名をギアナ高地という。大陸が繋がっていた頃からその地は全く動いておらず、何億年も前の姿が残っているという。さらにアマゾンから吹く風とカリブ海から吹く風がぶつかり合い、上空では常に雲が居座り空からの探査を拒絶している。人里離れた奥深くに2,000メートル級のテーブル型をした山々が、悠然と鎮座しているというのだ。
しかしベネズエラ旅行は一筋縄ではいかない。2015年といえば、シェール革命によって原油価格が暴落していた。ベネズエラは輸出総額の大半を石油に頼っている。シェール革命は、すでに情勢不安によってインフレを起こしていた同国をさらなるハイパーインフレーションへと導いた。ベネズエラの通貨は固定されていて、1ドル=10ボリバル・フエルテ程度。だがこのレートで旅行をすると、食事が1回200ドル程度の計算になってしまう。貧乏バックパッカーの僕には到底支払える金額ではない。では旅行者はどうするのか。路地にいる両替商にこっそり闇両替をしてもらうのだ。そのレート(2015年5月22日時点)は1ドル=402ボリバル! 公定レートと実に40倍の差。つまり、ベネズエラに入国する際は、米ドルの確保が必須なのである。ちなみに2018~19年の「地球の歩き方」では、闇レートは公定レートの2.1万倍との記載があった。ハイパーインフレーションは苛烈さを増し、国民に牙を向け続けている。ベネズエラ旅行では、インフレに苦しむ現地の人々がいるということを忘れてはならない。その後、ボリバル・フエルテは廃止され、ボリバル・ソベラノという通貨が流通したが、この通貨もハイパーインフレーションを起こし、現在はボリバル・デジタルという新通貨が流通している。

だが、一番の問題は、この国がとにかく汚職まみれなことだった。警察官が恐喝を堂々と行っているのだ。入国審査の際には全裸にされ、米ドルを所有していないかを確認されるという噂もあった。彼らは喉から手が出るほど米ドルを欲しているのだ。僕はジップロックに100ドル札を7枚収納し、シャンプーボトルの中に隠して入国を試みた。果たして作戦はうまくいったのか。結果は、シャンプーボトルを検められることなく、そして全裸にされることもなく、無事に入国。肩透かしを食らったが、無事に入国できるならそれに越したことはない。
僕はこの700ドルを闇両替で約2,800枚の100ボリバル紙幣に交換した。たった7枚の紙幣が、両腕で抱えるほどの大量の紙幣になったのだ。これで準備は整い、最初の目的地、ロライマ山へと向かうのであった。ちなみに、そのあと大量の紙幣を持っていることを理由に、保安員や警察官に何度も恐喝された。やはり噂は本当だったのだ。しかしどのような酷い目に遭おうが、ギアナ高地の感動が消えることはなかった。密林が広がる地球の果て。岩肌が剥き出しの巨大な山々が、雲海の切れ間から覗く。悠久の大自然が厳かに佇むその地は、まさしく「地球最後の秘境」だったのだ。

2アフリカ編 ナミビアからボツワナへ、バスで23時間!

ボツワナ「チョベ国立公園」 Photo: JT Platt/Shutterstock.com

2016年9月。アフリカへとやってきた。ナミビアにあるナミブ砂漠で1泊2日のテント泊を終えた僕は、次の目的地をボツワナと決めていた。ボツワナで野生動物を観察し、その次に世界三大瀑布の一つであるヴィクトリアフォールズのあるジンバブエへ向かう予定だった。その日の朝、ナミビアの首都ウィントフックを出発。地図で見るとナミビアの形は興味深い。隣国ボツワナの頭の上に腕を伸ばし、撫でているかのような形をしているのだ。この腕の道を通過し、無事にボツワナに入国。なんと、バスで23時間! 到着したのは翌日の朝だった。満身創痍でカサネという町に来たのだが、ここで問題発生。一番安い宿が1泊10,000円もするという。貧乏バックパッカーに1泊10,000円の宿は言語道断。普段、宿泊するのは、たいてい1,000円未満の安宿で、大半が相部屋だった。
そこで、僕は強行突破を図る。昼にボツワナのチョベ国立公園でのボートツアーに参加し野生動物を観察した後、タクシーを飛ばしてジンバブエに入国してしまうというプランだ。向こうへ行けば安い宿があるはず。面白いことに、この地はナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、ザンビアの4ヵ国が国境を接している。ジンバブエの国境が閉まるのが、午後7時。急げば間に合うかもしれない。ツアーではチョベ川での落日まで楽しむことができた。その美しい夕焼けは、皮肉なことに刻々と迫る国境閉鎖のタイムリミットを暗示していたのである!

終了後、タクシーを飛ばしてもらう。午後7時、滑り込むようにして国境に到着。ビザ代を支払い、瀑布と同じ名を冠するヴィクトリアフォールズという町へと無事に到着。時刻は夜の9時は過ぎていただろうか。10,000円の宿に宿泊することを回避し、1,000円程度の宿にチェックインすることができた。だが、その日のクライマックスはこれから訪れようとしていた。相部屋になったカナダ人の女性(安宿は、男女相部屋が標準)がクラブへ行かないか、と誘ってきたのだ。彼女はすでに現地の知り合いがいるらしく、屈強な黒人男性2人を連れていた。4人でクラブへ行こうと言うのだ。僕はクラブという場所には無縁で、派手な遊びはしたことがない。危ない目に遭ったらどうしようという不安の片隅で、煩悩が疼いた。結局、人生初のクラブ体験をジンバブエで経験することに。現地の人たちとたくさん交流ができ、楽しい時間を過ごすことができた。仲良くなった人たちに酒を奢り続け、自分でも浴びるように酒を飲んでしまった。翌日、二日酔いと共に目が覚める。10,000円を節約するために国境通過を急いだにもかかわらず、その節約以上に散財してしまったことに気づくのであった。

私の好きな作家・作品

呉勝浩先生、青崎有吾先生、櫻田智也先生の作品が好きで、よく読んでいます。
呉先生の作品は、人の心の隅に隠された暗い部分にスポットライトを当て、揺れたり蠢いたりする感情を描写してしまうところが魅力的だと感じます。
『ライオン・ブルー』『おれたちの歌をうたえ』『蜃気楼の犬』『爆弾』『スワン』などに強い影響を受けました。
青崎先生の作品では、『体育館の殺人』『図書館の殺人』が好きです。殺人現場の状況から犯人である条件を順番に列挙していき、容疑者を絞り込んでいく作業は圧巻の一言に尽きます。一番のお気に入りは『11文字の檻』に収録されている表題作で、真相を知った時の衝撃と興奮は今でも忘れられません。
櫻田先生の作品では、「蟬かえる」「ナナフシの夜」「火事と標本」が気に入っています。何気ない描写が真相に関係していたと分かる瞬間には膝を打ち、人の優しさが見える描写には心を揺れ動かされ、読了後は深い余韻に浸りました。読後感の大切さを学びました。
最近は、今回の応募作を執筆するきっかけになった『蒼穹の昴』の作者である浅田次郎先生の作品をたくさん読むようになりました。『五郎治殿御始末』『流人道中記』『地下鉄に乗って』がとても心に残っています。時代は違えど、人々は悩み葛藤を抱え、時に痛みに耐えながらも自分の運命にぶつかっていく。とにかく心にがつんと響く作品ばかりです。私も心を熱くさせるような小説を書き続け、微力でも読者のみなさんの力になりたいと強く思うようになりました。

『このミステリーがすごい!』大賞
編集部より

バラエティ豊かな謎と、
エモーショナルな
読み心地の一冊!

中華圏最後の皇帝・溥儀(ふぎ)は3歳弱にして即位するも、6歳の時に辛亥革命により皇帝の座を追われることに。元皇帝となった溥儀は紫禁城に住み続け、君主として復位することを虎視眈々と狙いながら過ごします。この物語は、15歳の溥儀が日本人絵師と出会い、さまざまな事件を解き明かす物語。城の外に出ることは許されず、溥儀の言葉は絶対ゆえ友と呼べる人物も皆無。そんな元皇帝の前に現れた日本人絵師の一条が、元皇帝にどんな影響を与えるのか――。時代に翻弄されながらも目の前の謎に取り組む彼らの姿を、ぜひご堪能ください。

『最後の皇帝と謎解きを』への
応援メッセージ続々到着

歴史の大きなうねりの中で
4つの謎に挑む
15歳の溥儀と若き日本人絵師の
友情に心を動かされた!

1920年代の紫禁城が目の前に現れ、その世界に吸い込まれていった。今確かにその場に自分はいた。
知らなかった特異な歴史上の中国の仕組みが事件の謎と絡まって、今までにないミステリーの読み心地を味わうことができた。
孤独だった元皇帝が日本人絵師との語らいの中で成長し、慈しみを理解していく。二人の友情が育っていく機微がエモーショナルだ。
身分や国籍を超えた温かいお互いを思う気持ちが一生の宝物のように感じ、胸がいっぱいになった。

ジュンク堂書店滋賀草津店/山中真理

面白かった。
元皇帝と日本人画家の友情が徐々に育まれていくところや、連作になっていてそれでもそれぞれの章にしっかりとした謎解きがあるところとか、この構成自体あまり過去に読んだ記憶がなく、こんな作品もあるのだと感心しきりでした。
真相は正直マジか!という感じでしたが、それを超越する友情が形成されていて人と人との気持ちは杓子定規では測れないのだな、そしてそれが良いところだよなと一人で納得してしまいました。

芳林堂書店高田馬場店/飯田和之

中華圏最後の皇帝溥儀が暮らす紫禁城で起きるミステリーというのがとても斬新でした。
溥儀はその特異な立場ゆえに誰にも心を開くことができなかったけれど日本人の一条によって少しずつだけど気持ちが変化していく。
最初は名前すら呼ばなかったのに、その変わりゆく姿に心がほぐれる。
ひとつひとつの謎解きもおもしろく最終章で明らかになる真相は思いもよらない展開で驚きました。
溥儀と一条の絆がじわりと胸にしみてくる、余韻があとをひくラストでした。

水嶋書房くずはモール店/井上恵

とても読み応えがあり、あまり耳にしたことのない言葉なども気にならないぐらい、物語に没入することができました。
ミステリーとしての謎解きの面白さはもちろん、元皇帝が徐々に心を開いていくさまも非常にリアルで、だからこそ、全てが明かされる最終章はすごく苦しくて、辛くて、悲しくて……号泣してしまいました。
ハッピーエンドではありませんでしたが、人間味に満ちた「泣けるミステリー」、すごく素敵だな、と思いました。

宮脇書店和歌山店/岩瀬竜太

時代背景や、国の文化、主要登場人物の多さなど入りにくそうなポイントが多いにもかかわらず、読み進めるほどに、この作品の構成の妙技にハマっていきました。設定を上手く活かしたこの構成は相当レベルが高いように思います。
第一章では密室殺人、第二章ではハウダニットとわりとシンプルながらも、しっかりとした理詰めで仕上げられた謎解きが宝島社さんのミステリー作品っぽいなと思っていました。ただ、この時点ではあまり設定が活かせてないように感じていました。別に現代日本を舞台にしていても成立させられるよなと。
この作品の真価は第三章からでしょう! 「宦官」の特性を存分に落とし込んだ謎解きにプラスして、それまでの二章での人間関係も踏まえたうえで物語が展開していくという連作短編の長所を活かした構成にグッと惹き込まれました。正直、この話がピークでラスト第四章はほぼほぼエピローグのような、きれいにまとめる為の話かなと思っていたら!!!!ここでまさかの全てをひっくり返すような策略があったなんて!!!!不意討ち過ぎて驚きMAXでした。

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このラスト二章が、前二章を匂わせ程度の伏線ではなく、しっかりと“それらを踏まえた上での”ミステリーとして仕上げられているのがとてもスゴいと思います。ちょっとした伏線程度だと、もはや巷に溢れ返っていますが、この作品ではそんなもんではなく読み進めるほどに面白くなるブーストになっているのが作者の手腕です。登場人物の多さも全員がちゃんとキーパーソンになっているので無駄がなく、何ならミステリー好きを逆に手玉に取っている感じすらあります。そして終わり方がまた切ない! それが良い!
単なるエンタメミステリー小説を読んだ読後感とは一線を画すこの気持ちがラスト2ページで構築されました。

紀伊國屋書店仙台店/齊藤一弥

学校で習った程度の知識ですが、読み始めると1920年の紫禁城へスッと入っていけた。
歴史描写や事件も興味深かったが、何よりあの当時の日常描写が読んでいてとても楽しかった。力強く生きようとする街の人々、紫禁城の中で生きている人々が鮮やかに思い浮かぶ。
歴史ミステリーではあるが私はとても読みやすく面白かった。

宮脇書店ゆめモール下関店/吉井めぐみ

章立てで、1つのミステリーが発生して結末があり、進むごとに、成長してく溥儀と、信頼や友情が芽生える物語に温かさを感じました。
が、その1歩ずつ階段を上るような物語が崩れるような後半の展開に骨太のミステリーとしての楽しさも味わえました。歴史の重さ…半端ない。
史実の記録では、黒でも白になるような環境で育ったと思えないほどに、高慢でなく、知性もユーモアも礼儀正しさもあったとされる溥儀。
その“個性”を裏付けるような知られざる物語、見事でした、唸りました。
歴史の重さと無常さを感じつつも、友情や成長が眩しい「歴史×青春×ミステリー」です。
素敵な物語をありがとうございます。

フタバ図書広報課/水本伸一

少しずつ距離が縮まっていく描写や犯した過ちの取り返せない後悔など、心に語りかけるものがありました。
ラストの謎解きと共に明らかになった事実はとても衝撃的でしたが、日記 四の最後の6行に偽りだけではなかった友情と剛の嘘無き本心を感じられました。
切なさで苦しくなりましたが、場所や時代が違っても、友達や支えてくれる周りの人の大切さを教えてくれた一冊でした。

うさぎや宇都宮テクノ店/太田貴美子

たった15歳の元皇帝。そんな元皇帝は、18歳の日本人絵師に何を求めるのか。様々な感情が渦巻く紫禁城で、何を思い過ごしているのか。
本来関わることのなかった二人が目の前の謎を解き明かしていく。どれも一人の力では解決できなかっただろう。二人だったからこそ解き明かせた謎だ。そして日本人絵師がもつ秘密に気づいた時、元皇帝は心の中で何を思ったのだろうか。
中華×ミステリー×友情=最高でした。

くまざわ書店調布店/山下真央

周囲から裏切られても奈落の底に突き落とされたとしても、危険をかえりみず人を信頼するということ。そうして育まれた誰にも邪魔をされない絆が、物語を優しく包み込む。
どんな困難でも飛び越えていけるような鮮やかな読後感をぜひ味わってほしい。

大盛堂書店/山本亮

ラストエンペラーで有名な溥儀の閉塞感と孤独、彼を取り巻く宦官たちの苦悩が日本人絵師の一条を通してよみがえった。
彼らをのみこむ時代の流れの中にも友情がなす軽やかな時間が確かにあったと喜びと安堵でいっぱいになりました。

未来屋書店入間店/佐々木知香子

本格推理を用いてかけがえのない友情を映し出す、出色の歴史ロマン!
紫禁城という閉じられた特殊舞台ならではの多彩な謎を解き明かす日本人絵師の誠実さ&少年廃帝との友情が育まれる展開の素晴らしさもさることながら、さらに激動の時代ゆえの物語全体を覆すこんなサプライズが待ち構えているとは。
切ないからこそ何よりも美しくきらめく、あのラストシーンが忘れがたい。

ときわ書房本店/宇田川拓也

面白かったです!!
中国が舞台で、登場人物も中国名が多く最初は、覚えられるかな……と不安だったのですが杞憂でした。登場人物みんな個性豊かで魅力的ですぐ覚えられました!
ミステリとして楽しめることはもちろんなのですが、それ以上に日常パートの彼らの何気ないやり取りにほっこりしたり、不器用な友情に胸が熱くなったりしました。
そして最後の展開! どういうラストになるのだろうと思っていたのですが、すごく綺麗にまとまっており気持ち良かったです。
読後の余韻が心地よく、しばらく物語から抜け出せませんでした。

未来屋書店碑文谷店/福原夏菜美

最後のドンデン返しはなかなかスリルがありました。
そして二人の「謎解き」からは身分も国も超える友情という絆が生まれると感じました。

未来屋書店武蔵狭山店/柴田路子

少年廃帝が、日本人絵師と結んだ驚きの契約。
最初は主従関係だった彼らが、同じ時を過ごす中で少しずつ距離が近くなっていく。
その様子に、心和らぐ温かな空気感に包まれていきました。
そして、紫禁城で立て続けに起こる事件をきっかけに、それぞれの関係性が変化していく。
謎と秘密が折り重なった先で、今まで知らなかった大切な感情が芽生えていくような友情ミステリー。
読後も、永遠に輝く記憶の絆を感じる余韻が残っています。

紀伊國屋書店福岡本店/宗岡敦子

日本人絵師の水墨画がしなやかに心に描かれて、行ったことのない紫禁城が鮮やかに浮かび上がる。
元皇帝のいる紫禁城を舞台に謎が謎を呼び、読み進めるごとに、切なさが胸に広がるのだ。
中国で出会った二人の友情は、強さが優しさとなり絆が深まっていく。
情感に満ちたミステリーが美しく、涙腺がゆるみ心動かされた!

うさぎや矢板店/山田恵理子

あらすじを読んだ時点で「おや…?これは何やら面白そうな予感がするぞ…」と思いましたが、やっぱりその勘は当たっていました。
激動の時代にあった中国の歴史を丁寧になぞりつつも、その中に“宮殿・後宮を舞台にした謎解き”と“日本人絵師と清朝最後の皇帝、国を超えた若きふたりの間に芽生えゆく友情”というエンターテインメント要素が巧く織り交ぜられていて見事でした。
ミステリー小説を読んでいたはずなのに気がつけば歴史書を読んでいるような、何だかとても不思議な感覚になる作品でした。

紀伊國屋書店札幌本店/関咲蘭

1920年代、あの溥儀を!?と歴史を踏まえての緊張感を味わいつつも、まるでその時代にタイムスリップしたかのような面白さがある。
揺らぐ運命に翻弄された若い廃帝に、日本人の絵師として出会ったことから起こる化学反応が微笑ましいところもあるミステリーでした。
ほんの一瞬の出来事だけど、きっと宝物みたいな時間がその後の人生の拠り所になるかもしれない。そうだといいな。

未来屋書店大日店/石坂華月

歴史に明るくないと読みにくいのでは?と、思っていたのも束の間。
紫禁城に仕える主人公と、読者も同じように城内の様子や異国文化の物珍しさなどを追ってゆける。慌ただしく重苦しい時代にもかかわらず、幼い天上人の態度や言動はどこかコミカルで、魅力のあるミステリー小説となっています。

丸善雄松堂広島支店/河野寛子

抗えない運命にもまったく消えない野望の炎、不屈の魂。
禁断のミッションはダイナミックにしてスリル満点。
歴史の闇を鮮やかに彩る謎解きの妙に息を呑み、軽やかに孤独な心に触れる繊細さの虜となる。
理性と感性を同時に揺さぶる忘れがたき一冊。
「こういう物語を読みたかった!」と何度も膝を叩いた。
斬新な設定と新鮮な驚きから感じる抜群のセンス。
図抜けた才能を世に示した書き手の出現に拍手喝采だ!

ブックジャーナリスト/内田剛

『名探偵ラストエンペラー』、この設定だけで充分エモい連作ミステリ。
皇帝と日本人絵師の友情と推理を楽しく読んだ。
だが一方で、我々は歴史的事実も知っている――。
この二人の行く末は、見逃せない。

啓文社岡山本店/三島政幸

中国ドラマが好きなので、この設定に興味津々。最後の時代の紫禁城は物悲しさを感じます。
また少年皇帝溥儀と日本人絵師が紫禁城での事件を通じて友情を深め、溥儀が心を成長させていくのになんだか切ない。ラストエンペラーの孤独と悲哀がとても印象的です。
立場の異なるふたりの関係と歴史の残酷さが描かれ、ミステリーとヒューマンドラマの両面で秀逸です。
自信持ってお勧めします!

BOOKSえみたすピアゴ植田店/清野里美

圧倒的没入感!!
友と呼べる者のいない孤独な少年廃帝と異国の地で生きる日本人。事件を解決するごとにじょじょに絆が深まる二人の姿が強烈でした。
また哀しみを誘うラストの余韻がいつまでも心に残ります。めちゃくちゃ面白かったです。

未来屋書店新浦安店/中村江梨花

タイトルを聞いて「異世界転生ものか?」なんて思ってしまったのだが、なんとガチの歴史ミステリーだった。
若き廃帝愛新覚羅溥儀と中国育ちの日本人絵師が、紫禁城という閉じた世界でお互いの身分や立場を超えてとある目的のために結ばれていく。それぞれの思惑に宦官たちが複雑に絡み合い、それでも少しずつ彼らがお互いを理解し変化していくさまを微笑ましく感じていると現れる最大の事件。知りたくなかった真実の、それでも進んでいかなければならない現実の冷酷さと厳しさ。けれどそれをほどいていくのは人を信じ人を頼り人を受け入れていく人としてのまっすぐな思い。国も身分も超えていくその思いに胸を打たれる。
唯一無二の皇帝として育ったがゆえに知ることのなかった「感情」というものを一つずつ手にしていく溥儀の変化が心に灯を点す。

精文館書店中島新町店/久田かおり

教科書でみた溥儀のモノクロ写真に色(ただし彩度は低め)がつくような感覚があり、実在の人物が出てくるフィクションの醍醐味を味わえました。
主人公の秘密と結末を含めて後宮ものによく見られるきらきらしさ華やかさはほぼなく、廃帝が暮らす宮城の空気が、物語で重要な役割をもつ水墨画の薄墨色と重なるのもこの作品ならではという感じがして、おもしろく思いました。
当時の背景や文化しきたりと絡めたトリックも楽しめました。

紀伊國屋書店横浜店/青木麻美

舞台は最後の皇帝が住む紫禁城。紫禁城に住む皇帝溥儀と日本人の若き絵師が謎に挑んでいく物語。
一筋縄ではいかぬ宦官達だが、絵師の孫犬は話を引き出していく。信じていた者たちが次々と去る悲しみを感じる皇帝溥儀。
謎解きミステリーとしても大層楽しめ、又、皇帝溥儀の青年としての面も充分に描かれている。
皇帝という孤独の中、絵師との交わりにより心が動き出し、人間としての成長していく姿に心惹かれる、孫犬の秘密にも驚きを隠せなかった。

旭屋書店船橋店/北川恭子

元皇帝・溥儀と日本人絵師・一条剛。紫禁城で起こる事件に、ふたりが友情を育みながら挑む姿に胸が熱くなりました!
溥儀がどんな未来を歩むのかわかっているだけに、剛とかけがえのない絆で結ばれていくのが切なくて。
ふたりの友情はどうなってしまうのか。ラストは涙が止まらなかったです!
歴史ミステリーは敷居が高くて遠慮がちな私でしたが、面白すぎて読む手が止まらなかったです!!

丸善名古屋本店/竹腰香里

元皇帝と日本人画家の少しずつ育まれていく絆。
画と事件が二人を成長させているようで、なんだか少し微笑ましい気持ちでした。
当時の背景をしっかり理解せずに読みましたが難なく読めて安心しました。
当時の背景をもっと理解して読みたくなりました。

紀伊國屋書店梅田本店/辻本彩

最後の皇帝と謎解きを

第24回大賞受賞作

最後の皇帝と謎解きを

犬丸幸平いぬまる こうへい

発売日:2026年1月9日(金)
定価:1,760円(税込)
ISBN:978-4-299-07500-0

これまでの大賞受賞作

謎の香りはパン屋から

第23回大賞受賞作

謎の香りはパン屋から

土屋うさぎつちや うさぎ

特設サイトはこちら

発売日:2025年1月10日
定価:1,650円(税込)
ISBN:978-4-299-06264-2

ファラオの密室

第22回大賞受賞作

ファラオの密室
(宝島社文庫)

白川尚史しらかわ なおふみ

特設サイトはこちら

発売日:2025年4月3日
定価:840円(税込)
ISBN:978-4-299-06623-7

名探偵のままでいて

第21回大賞受賞作

名探偵のままでいて
(宝島社文庫)

小西マサテルこにし まさてる

特設サイトはこちら

発売日:2024年4月3日
定価:880円(税込)
ISBN:978-4-299-05298-8

特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来

第20回大賞受賞作

特許やぶりの女王
弁理士・大鳳未来
(宝島社文庫)

南原詠なんばら えい

特設サイトはこちら

発売日:2023年2月7日
定価:780円(税込)
ISBN:978-4-299-03916-3

元彼の遺言状

第19回大賞受賞作

元彼の遺言状
(宝島社文庫)

新川帆立しんかわ ほたて

特設サイトはこちら

発売日:2021年10月6日
定価:750円(税込)
ISBN:978-4-299-02122-9

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