「こころの時代」に必要なのは、人の話を聴ける能力です。 |
メンタルケア協会 顧問 養老孟司 |
家庭で、学校で、ビジネスで、
「聴く」知性がいま現代人に求められている。 |
≪聴き上手≫65のコツ |
●「理解」よりも「共感」が大事●「安易な理解」は信頼を失う●「早急な助言」は反発を招く●「オウム返し」の相づちで核心に迫る●「キーワード」をさりげなく復唱する●「身を差し入れ」て聴くことで孤独感から救う●トゲのある言葉のトゲの抜き方●「対話のエンジン」を緩める質問力●「教えてもらう」ことで相手の存在を認める●頑張れ!と言わないで「励ます」傾聴術●問題の核心を相手に語らせる「積算温度」の対話術●言葉だけでは言いたいことの一割しか伝わらない…ほか
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科学技術や情報技術の著しい進歩によって、現代社会は物質的には豊かになりましたが、反面、心の豊かさが取り残されているのではないでしょうか。人間関係の希薄化がもたらす孤独感や不安感、喪失感などを訴える人がますますふえています。
現代人の15人に1人がうつに陥る傾向があるといわれています。また、同時に心の荒廃が大きな社会問題となるような世の中にあっては、「心の手入れ」をすることが必要とされているのです。それは、自分の生きがいをはっきりと認識させてくれるような存在を求めるということでもあります。そんな暖かな存在があったら、自らの生きる意欲につながっていくのです。 そうした社会の要請の中から生まれたのが「精神対話士」という存在です。医療行為、精神療法を用いることなく、あくまで対等な立場で、会話(対話)を通して人の心のケアを行うメンタルケアのスペシャリストです。 1993年に誕生して以来十数年間、いじめに苦しみ心を閉ざした子ども、家庭の問題が原因で話すことをやめてしまった少女、社会的なかかわりを持てなくなってしまった「ひきこもり」の少年、仕事や職場の人間関係に行きづまった会社員、終末医療を受け静かに死を待つ人たち、認知症の高齢者、統合失調症で悩む人たち……数多くの人々と対話し、実績を上げてきました。 本書では、その精神対話士の「対話」の本質をわかりやすく解説しています。お読みいただければ、現代社会で忘れられがちな「対話」の素晴らしさに気づかれるでしょう。人の話を「聴く」という行為が偉大な力を持っていることに、きっと驚かれることでしょう。 |
著者からのコメント
私たちは、自らを主張することばかりに重きを置いて、「聴く」ことの大切さを忘れていました。もちろん、学校で「聴き方」の講義を受けたこともないでしょう。しかし、これから「こころ」の時代に向かうにあたって、求められるのは人の話を聴く力です。「話す」より「聴く」ことで知性が試される時代になります。 人の話に耳を傾けてください。目の前にいる相手の心を聴こうとすることです。 言葉の向こう側にあるものを見つめ、かけがえのない一人の人間として尊敬して相手を受け止めることです。そうすれば、今まで気づかなかったいろいろなことが見えてくるようになります。そして何より、豊かな人間関係を築くことができます。それは新たな生きがいを生み出すことにもつながるでしょう。本書の主題である「聴く」ということが、みなさんの生きる知恵となってお役に立つことを願っています。 |
- 改訂し、新書化して、2013年01月10日に宝島社新書『人の話を「聴く」技術』を発売しました。
- 改訂・改題し、文庫化して、2009年03月05日に宝島SUGOI文庫『人の話を「聴く」技術』を発売しました。